校庭に置いてきたポニーテールの頃
グラウンドではサッカー部や野球部が活動しているため、宮西と浅倉は校舎横の非常階段の近くでバトンパスの練習をしていた。


「あっ、二人ともお疲れー!」


浅倉が俺らに気が付き、大きく手を振っていた。それで宮西もこっちに気がついたようだ。胸元で軽く手を振ってくれた。


「そっちこそお疲れ。だいぶ練習してたのか?」

「ううん、後半なんて喋ってばっかり。でもマナが付き合ってくれたおかげで、だいぶコツは掴めたよ。マナ、ありがとね」


浅倉は少し照れた様子で、手に持っているラップの芯を宮西に渡した。


「あっか、練習めっちゃ頑張ってたんだよ。みんなの足を引っ張りたくないって」


俺は宮西のそういうところが好きだと思う。

自分の苦手なことを潔く認めた上で、クラスのためにそれを克服しようと、人知れず努力をする。


たかがリレーなんだ。俺らのクラスが負けたとしても、誰も宮西のせいだとは思ったり、ましてや責めることなんてないはずなのに。

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