校庭に置いてきたポニーテールの頃
2001.6.3 言葉にならない苦しみ
女子と二人で出かけることなんて、俺の人生では今まで一度もなかった。

宮西がどんなつもりで俺を誘ったのかはわからないけど、今回はとにかく運がよかったとしか思えない。


お互い家で昼食を済ませてから、自転車で学校に向かう。校門が見えてくると同時に、宮西の姿も確認できた。


手持ち無沙汰な様子の宮西は、意味もなくきょろきょろと辺りを見渡したり、腕時計を覗いていた。

いつからここにいたんだろう。


俺に気づいた宮西が笑顔を見せてくれた。俺だけに見せてくれたその表情が嬉しくて、胸の奥があたたかくなった。


「ごめんな、遅くなって。結構待ったのか?」

「ううん、私も今来たところだよ」


ドラマでよく見る会話を実際に交わしたことがおかしくて、自然と二人で笑い合う。

なんでもない瞬間だけど、俺はすごくいいと思ったんだ。

< 239 / 345 >

この作品をシェア

pagetop