校庭に置いてきたポニーテールの頃
「二人乗り、ちょっと苦手なんだ」と言ってから、宮西が俺の肩を掴み、自転車の後ろに立ち乗りするようにまたがった。

肩を掴むその両手は、必要以上に力が入っていた。ペダルを漕ぎ出すと、さらにぐっと力が入ったようだ。


もしかして怖いのかな。様子を見ながら、普段の速度よりも遅いペースで自転車を漕ぐ。


徒歩で先に出発していた浦東たちの横を通ると、余裕が出てきた宮西がその集団に向かって手を振る。


「おい、二人乗り苦手じゃなかったのか?」

「もう慣れた。風が気持ちいい」


ちょっと肌寒いだろと思いつつも、宮西が落ちない程度に少しだけ加速した。後ろから笑い声に近い悲鳴みたいなものが聞こえてくる。


特に会話があるわけじゃないけど、宮西の笑い声だけで俺も十分に楽しめた。

たまに宮西がふざけて俺の髪の毛をつまんで引っ張ったりしてくる。


「このやろ、調子に乗ってたら落とすからな。将来ハゲたらお前のせいだぞ」

「落とせるもんなら落としてみなよ」


くっそ、可愛くねえ。

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