校庭に置いてきたポニーテールの頃
家で相談したときの、両親の意見はこうだった。

「あんたの行きたい高校に行きなさい」

今に始まったことではない。進路についての話は春から少しずつしていたんだ。


多分父親は今年度いっぱいで転勤になるだろう。ただその辞令が出るのが3月を過ぎてからだ。

結局、俺ら家族は来年どこにいるかわからない。どう考えても、辞令の発令より受験が先だ。


「お母さんは北川市で進学してもいいと思うわ。友達とかもいるでしょ。北川市には五年生の時から住んでいるもんね。そういえば、寛匡くんも東高に行くんでしょ?」


ヒロは緑ヶ丘と迷っているみたいだけど、他の友達も東高に進む人間は多くない。

友達がいるからって理由で進路を決めるわけじゃないけど、今のところの大きな決め手はそこなんだろうな。


まず宮西に会えなくなることが考えられない。


……それでも。

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