校庭に置いてきたポニーテールの頃
私立受験については秘密にする必要はなかった。次の休み時間になり、みんなが集まって来たときに、雑談の中でさりげなく受験の話をした。


「え!すごいね大嶋!頑張ってね!」と、真っ先に反応したのは浦東だった。


ヒロや浅倉も驚いた様子を見せてから、次々とエールを送ってくれた。

宮西は開いた口が塞がらない様子だった。目元もなんだか泳いでいるように見えて、明らかに動揺していた。


だから俺は少しだけ勇気を出して、宮西の方を向きながら言った。


「私立受験は力試しだ。公立は東高を受けるし、進学も東高のつもりだから」


少しだけ宮西がホッとしたような表情を見せた。目を固くつぶり、両手で口元を押さえていた。


その両手の隙間から紅くなった頬が見えた。

胸の奥でぎゅっと縮まるような音を聞いてから、俺は慌てて宮西から目を逸らした。

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