校庭に置いてきたポニーテールの頃
「高校生になってもバスケするの?」

「その予定。お前はなんかやらんの?」

「運動はできないし、かといって芸術の才能もないし」

「お前、そういえば趣味とかってないの?」


宮西との付き合いも二年近くになるけど、そういえば俺はこいつの趣味を知らない。

勉強が得意なことはわかるけど、帰宅部の彼女が家に帰ってから何をしているのかはわからない。


「趣味って言えるほどの腕前ではないけど、最近は料理が好きかな」

「へえ、いいね。今度俺になんか作ってよ」

「機会があればね」


案外家庭的なんだな。大人になって宮西と家庭を築く自分の姿を想像した。

会社帰りの俺がスーツなんか着ていて、家の玄関を開けたら「おかえり」って、エプロン姿の宮西が俺を待っているんだ。

ああ、なんだかそれって、すげえいいと思う。

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