校庭に置いてきたポニーテールの頃
「ありがと、宮西。だけど俺の事ばかりじゃなくて、一応お前だって受験控えてんだからさ。私立だって滑り止めとはいえ、油断はできないだろう」


宮西達女子の私立受験も、俺の私立受験と同じ日に行われる。


「とにかくお互い頑張ろうな。ヒロと三人で東高に通おう」


宮西は優しく笑って頷いてくれた。その笑顔はいつもと変わらないはずなのに、なぜか俺の胸を苦しくさせた。


そうだ。二人とも東高に合格したとしても、同じクラスになるとは限らないんだ。

双葉中のジャージ姿の宮西だって、もう見れなくなってしまう。


教室の中が少し寒いせいだろうか。それとも、窓から見える桜の木やグラウンドが真っ白なせいなのか。

電気がついていない今のこの教室に、いつもの賑やかな笑い声がないせいだろうか。


なんだか無性に寂しくなってしまった。


お互い無言になる。もうそろそろ面接練習を終えた武田が、宮西を呼びに来るころだけど。

気まずくなってしまい俺は宮西に背を向けて、自分の席に着いた。


背中から宮西の小さな声が聞こえてきた。


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