校庭に置いてきたポニーテールの頃
「ヒロだけには話しておく。実はな、うち、多分転勤になるんだ」

春から、いや、遡っていけば二年生の頃から、父親の転勤については予想はしていた。

だけど今ヒロに話していることは、もっと現実的な話だった。


ヒロには多分という言い方をしたが、父親の転勤は間違いないだろう。

先月末、俺の私立合格発表が出た直後に、父親の勤務先の中学校の校長から打診があったそうだ。

まだ内示も出ていないために、多分という言い方をしたのだ。


異動先は札幌だった。


父親はかねてより、札幌への異動を希望していた。札幌には父親の実家があるが、二年前にじいちゃんが亡くなってから、ばあちゃんが一人で住んでいる。

要するに、同居を考えていたのだ。そして、その希望が通ったということだ。

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