校庭に置いてきたポニーテールの頃
結局、決め手となったのは、今現在、自分には両親がまだまだ必要だということだった。

それは経済的な面はもちろん、気持ちの部分でもそうだろう。


これは今更考えても仕方がないけれど、例えば父親の転勤先が札幌以外だとしても、多分俺はついていったんじゃないかと思う。


もちろん北川市に残り、寮に入ることだって考えた。むしろ最初はそのつもりだったんだけど。

だけどよくよく考えてみると、宮西やヒロと一緒にいたいがために、仕送りを受けてまでとどまるのは完全に俺の都合だと気づいた。


自分の、この中学生という立場、家の事情、すべてを考えてみると、父親の転勤の話が出た時点で、札幌以外の選択肢は俺にはなかったのだ。


「そっか」


ヒロの寂しそうな声が、雪の中に溶けて消えていった。

< 311 / 345 >

この作品をシェア

pagetop