校庭に置いてきたポニーテールの頃
「お願い。待って」

「なんで引き止めるんだよ。俺なんてヤリ友にもならないだろ。さっき拒まれてんだからさ」


やっぱり大樹との会話は聞かれていた。扉一枚隔てたところで、狭い部屋には筒抜けだったのだ。

大樹が来る前は我慢していた涙も、今はこらえることができなかった。言葉が出ないかわりに涙だけはどんどん溢れてくる。


「宮西、いい加減にしろ。泣けばどうにかなるなんて思うなよ」


大嶋の鋭い言葉が私の胸に突き刺さった。もうこれ以上、私は大嶋を引き止めることはできない。


「……ごめん」


てっきりこのまま帰ってしまうかと思ったら、大嶋はため息をついてからソファに座り直した。


「あのさ、俺にどうしてほしいわけ?正直言って俺、さっきからお前の態度にイラッとしてんだわ」

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