校庭に置いてきたポニーテールの頃
「あのね、私、大嶋のことは嫌じゃなかったの。連絡取るようになってからはずっと気になっていたし、こないだ飲みに言ったときも楽しかった」


顔が赤くなっていくのがわかる。緊張して声も震えてしまう。その声を自分で聞くのすら恥ずかしかった。

大嶋の目を見て話すことができずに、フローリングの模様を見ながら話していた。


「だけど、抱きしめられることに違和感を覚えていた。うまく説明ができないけど、その時だけはなぜか大嶋じゃない気がしちゃって……」


大嶋が知らない人のように思えてしまったのだ。私の記憶の中に存在する大嶋と、抱きしめられたときの感覚がうまく重ならなかった。


「今の大嶋があの時と変わったように感じたんだと思う。だから戸惑ったんだろうな。

……だけど私、大嶋が好き。色々気持ちがぐちゃぐちゃになっているけど、今は大嶋に行かないで欲しいって思っている」


そういえば大人になってからは、こうして告白から始まる恋は少なかった気がする。

なんとなくキスをして始まったり、気がつけば付き合っていることが多かった。


私はぐっと目をつぶった。これ以上言葉は出ない。

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