校庭に置いてきたポニーテールの頃
途中から勝手に口だけが動いているような感覚だった。大嶋が大嶋じゃないみたいなんて、自分でも意味がわからない。


だけど好きってはっきりと言えた。もうそれだけで悔いはない気がする。それでも大嶋に嫌われてしまうなら諦めるしかないよね。


「……目を見て言えよ」


大嶋が私の両肩をつかんでこう言った。震えるまぶたを恐る恐る開ける。

そして大嶋の方に顔を向けるも、彼の力強い眼差しを直視することができずに、また俯いてしまった。


「お前が好きなのは、今の俺じゃないだろ」

「どういうこと……」大嶋の言っている意味がわからなかった。


私の肩を掴む大嶋の手に一瞬だけ力が入ったあとに、彼は私から離れた。

< 319 / 345 >

この作品をシェア

pagetop