校庭に置いてきたポニーテールの頃
じゃあ、私が好きなのは過去の大嶋……?まさか、そんなことがあるのだろうか。

だけど大嶋の言うことは妙に説得力があったのも事実だった。確かに私は無意識のうちにあの頃の彼と重ねていた。


目の前にいる大嶋の中に、昔の面影を探していたのだ。


「……やっぱり今日は帰るよ。なんかアレだな。キツイこと言って悪かったよ」


だいぶ時間が経っていたせいか、抜けていた腰は回復していた。


「あのさ、また……会える?」


スニーカーの紐を結び直していた大嶋の背中に向かって問いかけた。

しばらくの沈黙の後、大嶋が立ち上がりこう言った。


「無理だろ。お互い求めているものが違いすぎる。

それに……今日の宮西を見て、ちょっとないわって思ったんだ。悪いけど」


玄関の扉が閉まってからも、私はその場に呆然と立ち尽くしていた。

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