校庭に置いてきたポニーテールの頃
「もう一度大嶋に会って、今度はちゃんと今の大嶋と向き合いたい。

今更って思うかもしれないけど、でも私はあれからもずっと大嶋のことばっか考えてるの。

もう後悔したくないんだ。会いたいよ」


『……お前、俺が異動になるから連絡したのか?』


「新聞見たけど探せなかった。異動あったんだ。どこに行くの?」


『北川市だ。双葉中。まさかあそこに帰るなんて思わなかったよ』


懐かしい校舎に、双葉中の指定ジャージを着た大嶋の姿が目の前に浮かんだ。

私はどうしてあの頃の彼と今の彼を重ねていたんだろう。面影は残っているものの、今の大嶋はあの頃とは全然違ったのに。


『お前、また中学の頃を考えていただろ』

「うん。だけど、こないだとは違う。今の大嶋と重ねてはいないよ」


電話越しでいくら否定しても伝わらない気がしてしまった。

甘いよな、私って。そんなにスムーズに物事がうまく運ぶわけがないのに。

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