校庭に置いてきたポニーテールの頃
校舎に沿って角を曲がると、非常階段のふもとで校舎の壁によりかかる彼の姿を見つけた。

彼もすぐに私に気づき、はにかみながらこっちに向かって手を振る。


「宮西、こっち。寒いのに悪いな、こんなところに呼び出したりして」


寒さのせいなのか緊張からきているのかわからないが、なぜか声を出すことができなかったので、私はただ首を横に振った。


「宮西と話すのも、これで最後かもな」


そんなこと、あえて言葉にしなくてもいいのにと思う。

今までは実感が湧かず、ただぼんやりと思っていただけの『彼がいなくなってしまう』という事実が、言葉にするだけでだんだんと浮き彫りになっていった。


切なくなって彼の目を見ることができず、巻いていたマフラーに顔をうずめる。


「引越しの準備、進んでいるの?」


うつむいたまま、震える声で問いかけた。


「俺の部屋はだいぶ片付いたかな。教科書とかはもう使わないし、さっさと段ボールに詰めちゃった」


彼の明るい声はいつもと変わらないのに、今はするどく胸を刺す。

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