君への言葉たち
一線を越えない約束をしていた時期があった。

いまから思えば笑ってしまうが、真剣に節度を保っていた不思議な時期だった。

そっと手を握られるだけで、心の底からうれしかった。

寒い秋の夜、海岸をうろついて、君はついに私を抱きしめてしまった。

私は、信用して全てをゆだねた。

君は迷いに迷って、私にキスをしなかった。

私は信じていたから、いつものようにあわてふためいたり、冗談めかしてふりほどいたりしなかった。

あのとき私が君を信じたことが、深い絆の最初の一歩だった。
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