幕末を駆けた桜
『真白君がそこまで言うのなら、話してみる価値はありそうだ』
僕を見て優しい笑みを浮かべた近藤さんに、土方が諦めた様に溜息をついた。
一度決めたらやりきるのが近藤さん。
…もう、説得しても無理だと悟ったのだろう。
『明日、島原にて坂本と待ち合わせます』
その時に約束を取り付けよう。
『近藤さんがそう言うのなら、許可するしかねえが……』
『ねぇが?』
変な所で言葉を区切った土方を見れば、視線が合った瞬間何故かニヤリと笑われ。
不愉快に思って眉間にしわを寄せた僕と同じように、沖田も眉間にしわを寄せていた。
『明日、坂本と会うときは俺同伴』
『……は?』
何を言うのかと身構えた僕の耳に聞こえてきた言葉に、思わず素っ頓狂な声をあげてしまい、慌てて口を押さえる。
じゃなくて。
何故、わざわざ坂本と会うのに土方が同伴するんだ。
確かに京の町には慣れていない。
それは認めるし、迷って屯所まで辿り着けないという少しの可能性だってある。
だが……。
『何で土方さんが?
どうせなら僕が行来ますけど。
一度顔を合わせてますからお互いの名も知っていますし』