幕末を駆けた桜
『だから、何で土方さんが同伴する必要があるんです?』
『こいつが道に迷いそうだからに決まってるだろ。
それに、坂本といる最中に何かあったら困る』
『それなら、僕でもそんな事の対処はできますけど?
逆に、初対面の土方さんが行った方が坂本が警戒して何かしてくるかもしれないでしょう』
……売り言葉に買い言葉とは、まさにこの事なのかもしれない。
僕の止める声も聞かず…と言うよりも聞こえておらず、口々に言い争う2人を見て、僕を含めた組長方が溜息をついた。
『……聞けよ』
『だから! 別にお前じゃなくても良いんだよ‼︎』
『なら、土方さんじゃなくでも良いじゃないですか!?』
…また無視された。
それに、この2人の喧嘩の内容が幼稚すぎて、もはやこれ以上付き合ってられねえ。
我慢の限界…とでも言うように震えていた拳を、高く上に上げてから思いっきり下へと振り下ろす。
見事的中…てな。
いきなり食らった拳骨に、二人共殴った張本人である僕を睨みつけてくる。
……仲、良いのか悪いのか。
いや、喧嘩するほど仲がいいとも言うな。
『…お前らの耳は節穴なのか?
くだらない事で喧嘩して、近藤さん達を困らせるな』