幕末を駆けた桜




空は暗く、街灯がなければ慣れるまで何も見えないような暗闇の中。


よくよく考えると、島原というのは地域の名前で、具体的な待ち合わせ場所では無いことに気づいてしまった。



その後。
まぁ、何とかなるだろう…なんて考えながら土方達と宴会場に向かっている途中、見覚えのある建物が見えて。



…大抵同じ建物なのだが、その建物だけはやけに鮮明に覚えていた。



『……土方、沖田。多分ここだ』



宴会場へと向かう途中に見つけた建物は…いつか沖田から逃げている時に坂下に引きずりこまれた建物だった。



初めて見たのは、島原の夜の光景だったのか。
今考えてみれば確かに、繁華街のように煌めいていた。



近藤さんに一声かけ、その建物の中に3人で入ってから待つこと約1時間。








『……遅い』





いつまでたっても、坂本が現れることはなかった。
確かに、何時とかどこでとか詳しいことは聞いていなかったが!?


ここまで遅いと、さすがに芹沢さんも疑うだろう。

これでは、話すのは30分どころか10分も無い。



『そう怒るな。奴も、簡単には外を出歩けねえ状況だからな』



明らかに不機嫌になっていく僕を宥めるようにしてかけられた土方の言葉を聞いて、溜息をついた時だった。





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