幕末を駆けた桜
『……待たせた。
途中で京都見廻組に見つかってな』
やっと、坂本が建物の中に入って来て笑いながらそう言った。
京都見廻組…か。
面倒なものに追いかけられているらしい。
『遅い。何時間待ったと思ってる』
『だから、悪かったって。
そう言うお前こそ、変なの2人連れて来てるじゃねえか』
変なの…と言って僕の後ろに視線を向けた坂本に、土方と沖田が刀に手をかけるのを感じた。
……おいおい。こんな所で斬り合いなんてやめてくれ。
2人だとしても、拳銃相手に刀で渡り合おうなど、ただのバカだ。
『……チッ…まぁ、いい。取り敢えず、時間が無いから要件を話せ。
待ち合わせしていたのにも関わらず、屯所にまで出向いてきて僕に言いたかった事は?』
『時間ねぇの?
俺、お前と長話する予定だったんだけどな』
僕の言葉を見事に無視しやがったこの男は、そう言って残念そうな表情を浮かべた。
…長話……ねえ。
時間がある時ならまだいいが、生憎、今は芹沢鴨のことで手一杯なんだよ。
『次…話そう。
で? 要件を言え』
後ろの2人もそろそろ斬りかかりそうなくらい殺気出してきてるし。
そんなに苛つく事なら、着いて来なければよかったのに。