幕末を駆けた桜
正面から大声で名を叫ぶなど、犬かお前は。
『お前はまた勝手な事を…!』
後ろで土方が何か言っているが、そんなの聞こえない…振りをする。
いいだろ、別に。
僕だって、坂本と話してたまには違う気分を味わいたいんだし。
『…ああ。分かった』
僕を見て口角を上げた坂本を見て、少しからかいたくなる。
ああ…そうだ。
『その時はそうだな…甘味でももってこい』
『手土産持たないとといけねえの?』
案の定、光の速さで突っ込んできた坂本に喉を鳴らして笑い声をあげると、軽く睨まれた。
『…またな。来るの、待ってる』
『俺、お前の事諦めないからな』
何とも告白らしい言葉を残して建物から出て行った坂本を見送る。
『……真白君って、坂本と話している時が1番楽しそうだよね』
坂本の背中が小さくなっていくのを見ながら、隣で沖田がそんな事を呟いた。
…そう、なのか?
自覚してないし、そんなことはないと思うが。
『沖田と話している時も十分楽しいが?』
『そうじゃなくて…こう……なんて言うのかな。
遠慮せずに、心から信頼してる顔してる』