幕末を駆けた桜
…それ、どんな顔だよ。
恐ろしい程、全く想像つかないな。
『……まぁ、その顔がどんな顔だかは置いといて。
確かに、坂本と話すのは楽しいが、屯所の皆と話すのも楽しい』
最近仲良くなれたから、更にな。
もう、あの屯所の中に僕と話すときに爪先を僕から逸れた方向に向ける奴なんていないし。
その分、気疲れが消えて気が楽になった。
『なら良いけど…何となく、ムカつくからね』
『…ムカつく?』
ニッコリと爽やかな笑顔でそう言ってのけた沖田に首をかしげると、後ろから結構な重さの拳骨が降り注いだ。
…僕と沖田の頭に。
『何すんだよ、クソ方』
『そうですよクソ方さん』
ギロッと睨みつけた僕と、ニヤリと黒い笑みに変えた視線をぶつける沖田。
そんな僕たちの攻撃を受けて、少しダメージを受けたらしいクソ方は、眉間にしわを寄せて舌を鳴らした。
…舌打ちされる理由が見当たらないんだが。
この場合、どうすればいい。
『お前ら、時間がないの分かってて、立ち話なんて悠長なことしてたんだよな?』
まるで仕返しとでも言うようなくらい黒い笑みを浮かべたクソ方の言葉に、僕と沖田は固まった。
…完璧に忘れていた、芹沢鴨との宴。