幕末を駆けた桜



『……急げッ!』


予定よりは遅くなったが。

忘れ物を取りに行く為に屯所に向かっている途中に、不逞浪士に足止めされたとでも、適当に言えばいい。



取り敢えず今は、少しでも早く店に着くことだけを考えなければ。



『…何でこんな遠いんだよっ』


『芹沢さんが決めたんだから、仕方ないでしょ』



走りながら文句を口にした僕に返しながら、前を走る沖田についていく。


道分からないし。

もし迷子になったら、それこそ一生迷い犬だな。



『お前ら、そこを右だ』

後ろから聞こえて来た声に右へと曲がると、外まで響き渡るほどの笑い声が聞こえて来た。


…この声、原田さん……だよな?


こんなに大きな声で笑う人だったのか、あの人は。


なんとなくイメージが崩れたが、原田さんが笑っているということは芹沢鴨の機嫌はまだ大丈夫って事だよな。



『遅れてしまい申し訳有りません。
近藤さん芹沢さん』


勢いよく店の扉を開けてそう言うと、僕の顔を見た芹沢鴨は、なぜか目を輝かせた…気がした。


酒を片手に少し顔を赤らめた芹沢鴨が立ち上がり、少しフラついた足取りで僕の元へと近寄ってくる。



『さー、飲め飲め‼︎
今日はお前の歓迎会も兼ねてるんだ』



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