幕末を駆けた桜



『ま、俺は断られたけどな』



『あれは…だが、近藤さんも少しは揺らいでいるはずだ』



坂本が自重気味に言った言葉を肯定しながらもフォローする。


これでやる気が消えてもらっちゃ困るのはこっちだしな。



『ほう…? 坂本は既に話に言ったのか。
対談の機械が持てたのは、そっちの娘のおかげと』

『……ッ⁉︎』



何でもないように言った高杉の言葉に、思わず眉間にシワが寄る。


何故、女ということがバレた?


最早自分でも男なのではないかと思える程男装してきた期間は長いというのに。



『ああ…女の事か?』


『……ああ。何故気づいた?』



『そりゃあな…俺、お前の事気に入った』


まるで、オモチャをもらった子供のように目を煌めかした高杉の言葉に、その場が静まり返った。


……何、言ってんのこいつは。


『晋作、それ冗談…だよな?』


『さぁ?』


恐る恐る聞いた坂本に、意味深な笑みを返した高杉に、暫く僕の放心状態が続いた。



我に返ったときには解決したのか、それとも無視したのかなんなのか。

元の雰囲気に戻っていた高杉と坂本に視線を移してから、扉の方に一歩後ずさる。



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