幕末を駆けた桜
見覚えのない店に案内され、沖田の後に続き暖簾を潜って中に入る。
『……甘い匂いがする』
『そりゃあ、勿論甘味屋さんだからね。
あ、おじさん。今日は団子8本に餡蜜2杯!』
僕の独り言にちゃっかり返事を返した沖田は、ちょうど横を通ったおじさんに、笑顔を浮かべて注文をした。
…なんだ、その笑顔は。
甘味の事となると、子供以上に無邪気になるらしい沖田の笑顔に、思わず目線が釘付けになった。
『……真白君? 何か顔にでもついてる?』
『いや…すまないな。特に何でもないから気にするな』
沖田の問いに慌てて目線を逸らした僕に、ふーん…と呟いてから、沖田は僕の手を引いて、僕を隣に座らせてから自分も座った。
『それで…?
本当は、さっき真白君居なくなった間に何があったの?』
『なっ……!』
ワザワザ腕を掴んで僕の隣に座ったのは、この質問をした時に逃さないためか。
ニッコリと笑った沖田だが、完全に目が笑って居ない。
……何か隠している事があるってのは、バレバレってことか。