幕末を駆けた桜



『……真白君、よく聞いてよ』

僕の言葉を聞いた沖田は、いきなり真剣な表情で僕を見て、そう言った。


…何でいきなりそんな顔になるのか理解不能だけど、沖田がここまで真剣なら何か重要な事なんだろう。



『君は、もう僕達壬生浪士組の仲間として薩摩にも、長州にも噂が広がっているんだ。



腕が立ち、頭も切れる隊士がいると。

芹沢さんが大人しく、落ち着くようになったのは君のお陰だと、町の人達も』




芹沢さんって、芹沢鴨…だよな?

僕は特に何もしていないが…そうか。
自然と大和屋焼き討ちか芹沢鴨暗殺は阻止できたと言うことか。


いつの間にか、歴史を1つ変えてたのか。



『真白君、聞いてる?

君が狙われる理由として、僕等壬生浪士組に所属していながら倒幕派寄りの思想の持ち主である事が挙げられるんだ。


薩摩は…まだ分からないけど、きっと長州はそろそろ動き出す頃だと土方さんが言っていたんだよ』



『土方…が?

なら、土方が今日僕に外出許可を出したのって…。

沖田がいる事を知っていた上で、もしかすると長州から接触があるかもしれない事を見越しての事か?』



『そうだと思うよ』



僕の言葉に肯定で返した沖田に、土方への怒りがフツフツと積もる。

僕を、利用したって事、だよな?


下手したら、あの場で僕は殺されていたかもしれない。

きっと土方は、その事を見越して僕に外出許可を出した……。



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