幕末を駆けた桜
5月29日。
古高の言うとおり、長州の奴らが集まり始めたのを目で確認する。
『こっちが当たりだったなんてね』
物陰で長州の奴が池田屋の中に入っていくのを見ながら、沖田が楽しそうにそう言った。
『やはり、松平公に援軍を要請しておくべきだったのでは無いか?』
『どうせ呼んでも来ませんから、呼ばなくて正解ですよ近藤さん』
思ったよりも長州の浪士の数が多かった為か、近藤さんが僕にそう言ったのを、断固として否定した。
あの後、援軍要請をしようとした近藤さんと土方を止めたのは勿論僕だ。
幕府の手のものに手柄を横取りされるなんて、考えただけで虫唾が走るからな。
まぁ、それを言えば壬生浪士組も幕府の手のものにだけど。
『それに、さっき島田さんが様子を見に来ていましたから、そろそろ土方…副長達もこちらに来るはずです』
つい先ほど、島田魁に池田屋が当たりだと伝えた所だった。
そろそろ、あちら側についているはずだから、もう四国屋を出発している頃だろう。