幕末を駆けた桜
そう思いながら二階まで駆け上がり、1番手前から順に襖を開いていく。
1番奥から1つ手前の部屋。
その部屋に、予想通りの3人の姿があった。
『……やはり、いたか』
『お前か。こんな所まで追いかけて来て…俺の物になる気になったのか?』
1番最初に目が合ってしまった高杉晋作が、僕を見てニヤリと笑いながらそう言う。
…んなわけないだろ! どんな自意識過剰野郎だからそんな発想ができるんだ、こいつは。
『誰がなるか! そっちこそ、何呑気に僕達の敷地内で会議なんてしちゃってんの?』
『……バレないと思ったんですがね』
突然聞こえて来た敬語に驚いて声の主である伊藤博文を見ると、僕の視線を不思議に思ったのか、目が合うと首をかしげた。
あ、そうか。
この前、この人一言も発しなかったんだ。
だから敬語キャラに違和感が…って。
今はそんなこと考えてる場合じゃねえよ。
『あんたら、斬られたくなかったら逃げる事だな。
そろそろ…沖田が2階に上がる時間だ』
『1番組組長、沖田総司ですか。
彼の相手は確か…稔麿君にお願いしていた筈なので大丈夫ですよ』
稔麿…?
どっかで聞いた名だが…。
沖田が1番組組長と知っていてなお、消えることのない伊藤博文のその自信。
断固たる信頼と強さがあるらしい。
『……チッ…誰だか知らないが、早く僕の前から消えろ』
『まぁ、そう焦るな。
それに、今回はお前にも用があるんだ』