幕末を駆けた桜
『真白に、何があった。
それがお前の焦っている理由だな?』
真剣な目でそう言った土方さんに、いつものおふざけ無しで、こっちも真面目に答える。
『……はい。
真白君が、長州の奴らに連れ去られました』
その言葉に、土方さんを含めた周りがざわついた。
『……なん、だと…っ⁉︎』
『確かに、この前から長州が真白を探してるって噂は耳にしていたが…』
土方さんとの話を聞いていた斎藤君が、顎に手を当てながらそう言った。
……そうだ。
この前、確かにそんな話を耳にした。
あまり気にはとめてなかったが、真白君は、芹沢さんの暴走を止め、さらに坂本と近藤さんの対談の仲介役を務めた。
この働きが、長州の奴らに伝わらないわけがなかったんだ。
『……いったん屯所に戻って、山南さんを入れて会議を行う』
苦虫を噛み潰したような表情でそう言った土方さんに、誰も異論無しと屯所へ向かった。
そろそろ…夜が明けそうだ。
部屋に落ちていた真白君の刀を強く握りしめ、土方さんの後を追った。