幕末を駆けた桜
『……い、起きろ、真白!』
誰かに体を揺さぶられながら、名前を呼ばれている気がする。
ボーッとした意識の中で、ふと、池田屋で見た西郷隆盛の姿を思い出した。
…あの後、どうなった?
浮遊感の跡。
いや、その前に、沖田に名前を呼ばれた気がした。
なら、この声は沖田か…?
『真白、桂のやつが呼んでる』
桂? なんで沖田が桂の名前を…って。
この声、沖田じゃない。
聞き覚えのある声だから自然とそう思ったが、この声は坂本の声だ。
理解した瞬間、これまでの経緯を思い出して勢いよく起き上がる。
『いたっ!』
『いってぇ!』
勢いよく起き上がったせいで、僕を起こそうと顔を覗き込んでいた坂本の頭とぶつかる。
…朝からなんて不運な。
てか、ここ何処だよ。
こんな布団は僕のものじゃないし、第一、屯所にある僕の部屋はこんなに広くない。
『やっと起きたか…あ、そうそう。
桂のやつが話したいだと。
朝一で悪いが、着替えてから一緒について来てくれねえか?』