幕末を駆けた桜
そう言い刀を抜いて伊東に向ける。
そんな僕に怯んだのか、伊東は数歩分後ずさった。
『おい、真白!』
そんな僕たちを見て、さっきまで外野だったはずの藤堂さんが、僕の名前を叫んで僕の前に立ちはだかった。
藤堂さんの目は鋭く僕を睨みつけている。
……まぁ、仕方もない。
仲良くなったと言っても、藤堂さんとは余り話したことが無かったしな。
僕より伊東を信じるのも分かる。
だが…な。
『退いてください、藤堂さん。
邪魔をするならあなたも斬りますよ』
僕の前に立ちはだかるなら、たとえ誰であろうと敵だ。
そう付け加えて、同じように藤堂さんをにらみ返す。
誰かが唾を飲み込んだらしい。
静かな広間では、その音さえ耳が拾えるくらいの大きさになる。
伊東をかばうようにして僕を睨みつける藤堂さんと、そんな藤堂さんから目を離さないまま刀を向ける僕に、皆の視線が注がれているのを感じた。
……このままじゃ、キリがない。
そう思い、ため息をつきながら取り敢えず刀を鞘に納める。
『……藤堂さん、話し合いの邪魔です。
これ以上邪魔をするのなら、本気であなたを斬りますよ』
落ち着いて冷静になった声に言われるほど怖いものはないことは、僕が1番知っている。
案の定、藤堂さんは、怯えたように一瞬目を揺るがせた。
『お前は、目的の為なら仲間をも斬るのか?』