幕末を駆けた桜


ニヤリと口角を上げて言った僕に、伊東は目を見開いて驚いたように声を上げる。



『どこでそれを…っ』


『あんたに教える義理はない。

それより、その反応は…肯定ととっても良いんだな?』



睨みつけながら問いかけると、言葉が詰まり言い訳が思い浮かばないのか、目を泳がせる。


『……山南さん』


僕だけが追い出したいわけじゃない。
僕だけが、こいつに言い返したいわけじゃないんだよ。


僕が名前を呼んだのと同時に、襖が勢いよく開く。


皆の視線がそこに集まり、そして予想外の組み合わせにその場が再度ざわついた。


それもそのはずだ。
襖の前にいた人物は、


『話には聞いていたが…えれえもんを入れたもんだな。土方よ』



『芹沢さん…⁉︎』


まず1人目。

やはり酒を絶っているのか、珍しく片手には鉄扇だけを持ち、伊東に視線を向けて眉間にしわを寄せた鴨さん。


そんな鴨さんに、土方は想像していなかったようで、焦りを含んだ声をあげた。



『真白、僕のためにありがとね。
鴨さんと錦くんともよく話せたよ』



『仲良くなったみたいで良かったです』



そして2人目。

この前最後に会った時よりも顔色も良くなり、雰囲気も落ち着いていたように感じられる山南さん。


そんな山南さんは、鴨さんと新見さんの呼び方が変わっていることでわかるように、どうやら本当に仲良くなったらしい。


山南さんがあっち側と仲良くしてくれれば、山南さんの脱走も防げて、鴨さんに近藤さんを説得してもらえる機会も増えるはずだ。


まさに一石二鳥。


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