幕末を駆けた桜


『なんだい…?』


突然の僕の言動に慌てた様に返事した近藤さんに、外出許可を求めた。


今、ここにいるのは得策じゃない。

少し危険だろうがなんだろうが、外へ出るべきだ。


『……頭冷やして来ます』


近藤さんが頷いたのを見て、早足でその場から立ち去る。

…僕らしくないな、あれだけで血がのぼるなんて。


いや、違う。

女の癖にと言われるのは確かに嫌いだが、それを土方に言われたことにショックを受けてるんだ。


信頼…してたしされてると思ってたんだが。

それも、全て僕の自意識過剰による勘違いだったらしい。


屯所を出て、フラフラとそこら辺を歩いていく。

たまに巡察出会う人々や、通りすがりの人たちに挨拶をしながら、いつの間にか、土手側まで歩いていた。



『……女の癖に…か』



イラついてるんじゃない。

いま、僕の中にある感情は、悲しいと言う感情だけらしい。



刀を横に置いて、土手の草むらに寝転がって空を仰ぐ。

雲ひとつ無い、嫌味なくらい青い空。

そんな空を見上げて、もう一度ため息をついた僕の顔に、ふと影がかかった。


『……あんたは…』


『桂だ。久しいな、真白』

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