幕末を駆けた桜
『手加減無用だよ』
『……手加減など、初めから頭にない』
木刀を構え、沖田と向き合う。
どうやら審判は土方がやってくれるらしく、土方の合図で沖田に意識を集中させた。
強い相手と戦う時の高揚感は、日に日に増していく。
自分が強くなるにつれて、相手も強くなる。
沖田は新政府軍の中で飛び抜けて強い。
斎藤もだが、負けそうになったことがあるのは沖田だけだ。それも、数度ある。
両者動かぬまま、相手の隙を伺う。
……ラチがあかないな。
こちらから行かせてもらおう。
ニヤッと口角を上げ一気に間合いを詰める。
そんな僕の行動に咄嗟に反応した沖田は、綺麗に木刀を交わしていく。
『……強いな』
『真白君もね』
反撃とでもいう様に次は打ち込んで来た沖田の刀を上手く交わし、一旦飛びのいて距離をとる。
……力では押し負ける。
なら、速さでいくしかない。
始めと同じ様に打ち込みに行く。
沖田が木刀で僕の木刀を弾き返そうとした瞬間、体勢を崩して沖田の右にすり抜ける。
『なっ…』
咄嗟に振り向いた沖田の胴に木刀を叩き込み、座り込んで唖然と僕を見上げる沖田に口角を上げて見せた。
『僕の負け、か。
あー…真白君、本当に強いね』
あーあ…と溜息をついた沖田の隣に僕も座り込みそのまま床に倒れる。
『沖田、お前、強くなりすぎじゃないか。
……疲れた』
吐き出す様にそう言った僕に、今度は声を上げて笑った沖田は僕の隣に同じ様に寝転んだ。
『そう言って貰えると嬉しい』
沖田との戦いは神経を使う……ってか、頭が痛くなりそうなくらいいつの間にか集中している。
終わった後いつも怠いのはそのせいだろう。