幕末を駆けた桜
長州の広大な空き地に作られた新政府軍の本拠地は、その土地の広さを満遍なく使った大きい建物だ。
道場が別にあり、なおかつ小将以上に1人部屋が与えられたくらいだ。
与えられた自室に戻り、沖田が先ほど見せてきた作戦を思い浮かべながら、先程の土方との会話で出てきた弾丸を指で弄ぶ。
それにしても、良くできてる。
これに合う銃の方は先日送られてきていたから、後で試し撃ちしなければ。
『土方、明日使うって言ってたしな……』
『お前、その明日の戦に参戦すると言うのは本当なのか』
『ああ、そのつもりだけど……って、何でここに居るんだよ、桂』
1人言に返ってきた台詞に思わず声のした方を見て返し、思わず固まった。
何でこいつがここに……と言うより、いつから居た?
僕は、桂が入ってきたことに気づかなかったってことか?
『安心しろ。お前が入って来る前から部屋にいた』
『……何が安心しろ、だ。
お前、勝手に部屋に入るなと何度も伝えたはずだろう?』
元帥……と、背中に大きく描かれたマントを羽織りこちらを見て口角を上げた桂を睨みつける。
僕の断りもなく部屋に無断で入り込むのは、これが初めてじゃない。
元帥だからと言って、勝手すぎるだろう、この男は。