幕末を駆けた桜



『それは置いといて、明日の戦に参戦すると言うのは本当なのか』


なぜか突然視線が鋭くなった桂に一瞬怯むも、負けじと睨み返し頷いて肯定の意を示した。

そんな僕を見た桂はワザとらしくため息を吐いて見せ、先日届いたばかりの……今、僕の手の中にある銃弾が使える銃を僕に向けた。


『……何のつもりだ?』


弾の入っていない銃など、脅しの道具にもならないと鼻で笑うと、桂は深く眉間にしわをよせた。



『脅しのつもりじゃない。
お前は、今や新政府軍の同盟を支える支柱のようなものだ。


……そんなお前を、簡単に戦に出すと思っているのか』



要するに、どこから聞きつけたかわからないけど(多分土方辺りだろう)それを知った桂は僕を止めに来たってわけか。


桂の言い分じゃ、近藤さんと西郷もそれに加わってる様だな。



『別に、止めても良いけど。僕は勝手に行く』


そんな桂たちの言葉が何でもないとでも言う風に口角を上げそう告げる。
最近紙類ばかり回って来ていたのは、やはり僕を前線に出さないためか。


『仕事はこなしていますが……それでも何か文句がありますか?
桂元帥』


滅多に使わない、多分一回も桂に対しては使ったことのない敬語を使いからかい気味にそう言うと、桂は諦めた様にソファーに寝転がった。


……折角人が貿易しに来た外国の奴と交渉して貰ったソファーに、この男は何自然と寝転がってるのか。


隠す気もなく盛大に舌打ちをして、桂が持っていた銃を取り上げる。


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