幕末を駆けた桜
そのまま、椅子にかけてあった鞄と愛用している竹刀を取り、鞄を肩にかけ、なるべく音を立てないようにして図書室を出る。
僕は、神楽真白。
家が道場ということもあり、幼い頃から父に教えられた剣道で師範代にまで上り詰めた。
周りが男だらけの生活だったからなのか。
一人称が僕となり、男みたいな言葉遣いが癖となっている。
一方で、母はそんな私の男勝りな特技に頭を悩ましているが。
もはや、今となっては剣道は僕の生き甲斐なのだから、何を言われようと辞める気などサラサラない。
帰りの道を、特に用心するわけでもなく。
いつも通り、いつもの道を通って普通に家に帰っていたつもりだった。
のだが。
大きい交差点に差し掛かった途端、僕の隣を1人の男の子が通り過ぎていった。
慌てて男の子を視線で追うと、目の前からトラックが迫っていて。
持っていた鞄を投げ出し、思わず男の子をかばうために頭を抱え、体を包む。
それと同時に、全身に鋭い痛みが走って、背中を強く打ち付ける。
息もできないほどの痛さの中、僕は暗闇に沈んでいった。