幕末を駆けた桜
そんな土方歳三の声が聞こえても、僕も沖田総司も、一歩も動かない。
否、動けない。
この緊張感…この、高揚感。
全てが久しぶりの感覚で、僕の中の何かが騒いでいる気がする。
強い奴なんて、久しぶりだ。
それも、こんな強い奴なんて……。
『……このままじゃ、埒があきませんので。
こちらから行かせてもらいます』
そんな沖田総司の声が聞こえたかと思った瞬間、目の前に迫っていた竹刀を交えて抗戦する。
そんな僕の動きを見た沖田総司が、どことなく楽しそうに感じたのはきっと僕だけだろう。
こいつは、僕に似ている…。
そんな気がしながら、沖田総司の竹刀を交わしていく。
『守ってばかりじゃ、負けはなくとも勝ち目もありませんよ』
そういった沖田総司は、打ち込んでいた竹刀の手を止めて数歩後ろに下がり、竹刀を横に寝かせて構えた。