幕末を駆けた桜




『それで、この前土方さんの豊玉発句集を持ちだして…』



昔のことを楽しそうに話す沖田さんに、思わず口角が緩む。


土方さんも沖田さんも、見ていれば喧嘩ばかりだが。

その喧嘩はほとんど幼稚なもので、沖田さんから仕掛けることが多い。




『沖田さんは、土方さんが好きですよね』




『……ん⁉︎』



一瞬固まり、驚いたように声を上げた沖田さんを見て、勘違いしていることを悟る。


『男色と言う意味ではなく。
家族愛…とでもいうんでしょうか?』



僕の言葉に、真剣な表情を浮かべた沖田さんが、軽く頷いたのが視界に入った。



『土方さん、たまには遊ばないと仕事のしすぎで胃に穴があきそうだし』


仕方ないから僕が遊んであげてる、と言った沖田さんに、素直にそうですかと返した。



……僕から見たら、土方さんが遊びに付き合ってるように見えるが。




まぁ、それはいう必要はないだろう。





< 40 / 256 >

この作品をシェア

pagetop