幕末を駆けた桜
『それで、この前土方さんの豊玉発句集を持ちだして…』
昔のことを楽しそうに話す沖田さんに、思わず口角が緩む。
土方さんも沖田さんも、見ていれば喧嘩ばかりだが。
その喧嘩はほとんど幼稚なもので、沖田さんから仕掛けることが多い。
『沖田さんは、土方さんが好きですよね』
『……ん⁉︎』
一瞬固まり、驚いたように声を上げた沖田さんを見て、勘違いしていることを悟る。
『男色と言う意味ではなく。
家族愛…とでもいうんでしょうか?』
僕の言葉に、真剣な表情を浮かべた沖田さんが、軽く頷いたのが視界に入った。
『土方さん、たまには遊ばないと仕事のしすぎで胃に穴があきそうだし』
仕方ないから僕が遊んであげてる、と言った沖田さんに、素直にそうですかと返した。
……僕から見たら、土方さんが遊びに付き合ってるように見えるが。
まぁ、それはいう必要はないだろう。