幕末を駆けた桜
『あ、この店だよ』
唐突に声を上げた沖田さんに顔を上げると、目の前の店からなのか、甘い匂いが鼻を掠めた。
『こんにちは』
『沖田さんか、久しいね。
今日もいつものやつかい?』
いつものやつ…と言う言葉が、結構な日数ここに通っている事を裏付けた。
『親、後ろの人は初めて見るね』
その言葉に顔を上げると、沖田さんと話していた女将さんらしき人が僕を見ていた。
…僕のことか。
『初めまして、真白と申します。
最近壬生浪士組に入隊いたしました』
頭を下げてそう言うと、可愛い顔してるね? と言った女将さんに顔を上げて苦笑いを漏らした。
『今日はこの子もいるから、いつものやつに10本ほどみたらし団子足しでお願いします』
沖田さんの言葉に返事して店の奥に入って言った女将さんの後ろ姿を見送って、沖田さんに促されるまま近くの席に座った。