幕末を駆けた桜
馬鹿なのか、この男は。
いくら顔がバレていないからと言って、普通隣に座るか⁉︎
『真白君、どうかしたの?』
『…いえ、なんでもありませんよ。
早く来ないかと考えていただけです』
内心、話しかけてきた沖田さんに焦りながらも、無表情を心がけて冷静に答えた。
『ここの団子、美味しいから絶対気にいるよ!!』
『甘味好きの沖田さんが言うなら、本当に美味しんでしょうね』
隣から嫌という程視線を感じるが、沖田さんの前で話す訳にはいかない。
あいつも分かっているのか、自分から話しかけて来ることはなかった。
『……そう言えばさ、真白君には言ってなかったけど』
『なんですか?』
『坂本龍馬って人が京に来てるらしいんだけど、一応見つけたら屯所に連れて来てね』
……このタイミングでそれを言うか。
固まった僕と、驚いたのか、隣でゴホゴホとお茶をむせたらしい坂本龍馬。
そんな2人に気づかなかった沖田さんに内心安堵しながら、隣に視線を移した。
坂本も丁度僕を見ていたらしく、苦笑いを浮かべた坂本と目があった。