幕末を駆けた桜
そのために、とりあえずは此処の場所と年号を聞かないといけない。
1つため息をつき、隣に落ちていた竹刀を持って木々をかき分け進んで行く。
人の声が聞こえ、少し足を速めると、やっと森から抜け出すことができたと同時に、自らの目を疑った。
低い、建物。
コンクリートなんかじゃない、道。
当たり前のように袴を身につけ、平然と刀を携行している。
こんな光景、今の時代にはあり得ない。
自分の格好が何故か袴であることは、この際よしとしよう。
目立って浪士の奴らに目をつけられても困る。
まぁ、森の中から、道を通らず木をかき分けて此処まで出てきた時点で、既に少し目立ってはいるが。
それは少なからず、良しとしよう。
僕を不思議そうに見つめる野次馬の中に、綺麗な女の人がいるのを見つけて、ゆっくり近づき声をかける。
『……僕は神楽真白。
綺麗なお姉さん。
貴方の名前を聞いても良いですか?』
猫を被りそう聞きながら首をかしげると、少し顔を赤らめながら、自らを華と名乗ったお姉さんに向かって、ニッコリと笑う。