幕末を駆けた桜
『……仕方ないですので、今回はあなたを見逃します。
ですが、僕はあなたの顔をしっかりと覚えています。
ですので、次会った時は確実に屯所へ連れて帰りますから』
少し考えるそぶりを見せた後そう言った沖田さんに、思わず安堵の溜息が漏れた。
『まぁ…真白ちゃんがあなたと仲が良いなんて、気に食わないけどね』
声のトーンと口調が戻り、加えて僕をちゃん付けで呼んだ沖田さんに、首を傾げる。
そんな僕の隣で、坂本は沖田さんを睨みつけているように見えた。
……なんなんだ、この険悪な雰囲気は。
『真白。お前、俺のところに来ないか?』
『……はい?』
暫くにらみ合ったかと思えば、坂本によって唐突にかけられた言葉に、抜けた声が出てしまった。
何を言ってるんだ坂本は。
そのセリフだと、まるで僕に一緒に幕府を倒す手伝いをしてくれと頼んでるように聞こえる。
『そんなのは許せないよ。
真白ちゃんは、僕達の仲間だからね』