幕末を駆けた桜
『真白君はもう壬生浪士組の仲間ですから、手を出すのは許しませんよ』
『分かったから、睨むなって』
鋭く睨み付けた沖田さんに、降参を認めた坂本が団子を一本咥えて立ち上がった。
『捕まっても困るし、今日はこんくらいで帰るとする。
……またな、真白』
暖簾をくぐって店から出て言った坂本の後ろ姿を見て、ため息をこぼす。
この状況で帰らないよな、普通は。
横目で沖田さんを盗み見ると、何を考えてるのかわからない表情を浮かべて。
無心で団子を消費していた。
できる事なら、今すぐこの場から坂本と同じ様に僕も立ち去りたい。
けど、そんなこと出来るはずもなく。
沖田さんが団子を完食するまで、その場で動かずに無表情のまま固まるしかなかった。