俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
『おはようございます。昨日は私も寝てしまっていたので大丈夫です。夜、気を付けてね。待ってます』
電車に乗って、返事が返ってきたことにほんの少しだけ安堵した。
でも、杏の大丈夫は当てにならない。
ちゃんと顔を見て安心したい。
今日は絶対早く帰る。
なんとか仕事を終わらせて、時計を見たら19時を少し過ぎたところで。
杏に早く会える嬉しさから、連絡をしようと携帯を触ってみたらラインの着信一件。
杏だろうと顔を綻ばせて開いてみたら華さんに拉致られていた。
『お疲れ様です。華ちゃんも早く終わったらしくご飯に誘われたのでまる太に行ってきます。もし早く終わったら会社まで戻るので教えて下さい』
マジか……。
ガッカリ感は拭えないが、これは仕方ない。いつも22時は過ぎてからしか会いにいけないから夕飯は済ませてから会うのが常だ。
でも約束をしていた手前俺の仕事に合わせて帰宅するからと、気遣ってくれる杏はやっぱりいい女で。
『早く終わったら』なんてわざわざ入れてくるのも、杏も早く会いたいなんて思ってくれてるんじゃないかって、そんな深読みしてしまう俺は相当めでたい。
時刻はまだ19時過ぎとはいえ、杏をまる太から会社まで一人歩かせるなんて危ないことを俺がさせるわけがない。
とりあえず華さんなら合流しても平気だろう。
まる太まで迎えにいくことにした。
念のため店の前から電話する。
「もしもし、恭一君?」
「あ、杏?うん、俺。まだまる太にいる?」
「はい。すみません。もしかしてもう終りそうですか?」
「いや、いいんだ。じゃあ入るから」
「えっ?ご、ごめんなさい。聞き取りにくいので一回外に出るので少し待ってください」
店のなかで声も聞き取りずらかったんであろう杏は、俺の台詞を聞き直そうと外に出るといってきた。
それならと、「分かった」と外で待っていると、ガラリと店のドアを引き、携帯を握りしめた杏が店から出てきた。
「杏!っ、━━━━━はぁぁぁぁ!?」
杏を見かけた瞬間名前を呼んで、俺の可愛い彼女を振り向かせれば、何故かめちゃくちゃ可愛い格好してメイクもばっちりしている杏に思わず声を張り上げてしまった。
「えっ?杏?ちょっ、何その格好!?」
俺の声に気付いて振り向いた杏は、先ずは俺が居たことにビックリして、戸惑って、でも照れ臭そうに微笑んだ。
その笑顔は破壊力抜群で、一気に顔に熱が溜まる。うっわ、俺、絶対今顔真っ赤だ。