俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
すっぽりと腕のなかに収まる杏の肩の小ささにこんなときだけどキュンとくる。
これで杏が離れようと暴れなければ最高なのに。
しかしながら部が悪いのはこちらのほうで、これ以上杏の機嫌を損ねるわけにはいかない俺は素直に腕をほどいて杏を解放する。
「杏だけだから。お願い信じて?」
最大限自分の顔を利用して、なし崩しに許してもらおう。
物凄く気持ち悪い顔したキヨが視界の端に映っていたとしても。
ほら、杏はいつもみたいに困り顔して
「仕方ないですね」って言ってくれる。
助かった。
「まぁ、今何かあったら話し合う余地もありませんが」
しっかり釘を刺すことは忘れずに。
ですよね。
しかしながら惚れたもん負けっていうのか全く杏に頭が上がらない。
俺様よろしく強引に動けたあの頃が懐かしい。キヨ曰く、それもこれも過去の行いのツケらしい。
いや、でもそれで迷惑かけてないじゃん!
と声を大にして叫べないのが惚れた弱味なんだろうな。
だってもう杏がいない日々なんて想像できない。
あぁ、もう勘弁して。
好きすぎて、愛しすぎて、俺、ストーカー一歩手前だから。