俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集

女同士で何を話して和解したか知らないが、キヨと杏が楽しそうに話している。
仲良くなったんだな。
キヨは昔から容姿のせいと、俺の幼馴染みって関係からか女友達に恵まれなかった。

考えてみれば女友達とこんな無防備に笑うキヨは初めて見たかも。
こいつも杏に堕ちたか。

俺から奪うように杏を引っ張って俺を威嚇する。
仕方ない、この場はキヨに杏を譲ってやるよ。初めての女友達だからな。
この場だけな。


あーあ、と飲み物を煽りながら二人の様子を観察していると隣に華さんが近づいてきた。

「お疲れ」

「お疲れ様です。すみません、杏がお世話になりました」

グラスを合わせて挨拶を交わす。
華さんが声を潜めて内緒話のように俺の耳に顔を寄せてきた。
何だ?

「あのね、この前の出来事の時なんだけど、杏が私に言ったのよ。
キヨちゃんに会って、小早川君の隣に立ってる姿がお似合いだったって。可愛いヤキモチよね。今まで私が何回言っても聞く耳を持たなかった杏が『可愛くなりたい』って言ったのよ。
あの姿は小早川君の為なんだから、ヤキモチなんかで悲しませちゃ駄目よ」


うわっ、なんだそれ。まじかそれ。
可愛すぎるんだけど。
漫画みたいにズキュンと心臓に矢がぶちこまれた気分だ。

堪えきれずに顔がにやける。
隠すように両手を口許に持っていく。

「華さん、マジですか」

クスクス笑いながら頷く華さん。
「それにね、」……と、一転意地悪な顔をして言葉を続けた。

「今の姿を社内の人間は既に知ってしまってるから、あの顔で眼鏡に戻しても無駄みたいよ?」

は?

「メガネ萌えらしいわよ」

華さんは、クスクス控えめに笑っていたはずが堪えきれず声をあげて笑いだした。

はぁぁぁぁぁぁぁ?
なんだそれ!?
メガネ萌え?
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