俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
チッ、と小さく舌打ちして女を無視して杏を探す。
「あのぅ、聞いてます?」
高かく甘えた声で、きっとこの女の最大の勝負笑顔を向けられたんだろうけど、今の俺には何の食指も動かない。
「あぁ?知らねぇよ。勝手に迷ってろよ」
この顔からこんな台詞が出てくるなんて思わなかったのか女達が硬直した。
「えっ?」
知らねぇよ、早くどっか行けよ。
「あ、あの?」
しつこいんだよ。
「チッ、だから俺には関係ねぇんだよ」
女達を睨むと、女の視線が俺からずれて俺の後ろを見ているようだ。
なんだ?
さっさと離れてほしいけど、すっとずれた視線に頭をかしげると、後ろのスーツの裾が小さく引っ張られる。
音にすると、ツンツンって。
呼ばれているようにスーツが動く。
女の視線もまだ後ろを見たままだ。
何なんだよ、とたるそうに振り向くと目を大きく見開いた杏が俺のスーツの裾を引っ張っていた。