俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
よほど恥ずかしかったのか、まだ顔が少し赤い。
頬に手を当ててぐにぐにマッサージするように動かしている。
「何してんの?」
擦ると更に赤くなるぞ?
「に、にやけちゃうんです」
何それ。
なんなのほんと、勘弁してよ。
人込みだろうとなんだろうと抱き締めたくなる。こんな街中で理性と戦うはめになるとは思わなかった。
今から映画なんて暗闇で俺、我慢できる自信がない。
なんでこんなに発情してんの。
くっそ。
頑張れ俺。
そっと今だ手を動かしている杏の片手をとり、頬から離す。
「赤くなるぞ。なぁ、さっき悪かったな」
そのまま手を繋いで、せめて手から感じる温もりで我慢しようと、俺の阿呆な欲望を気取られないように普通に、と言い聞かせて杏に声をかけた。
「え?恭一君が悪い訳じゃないですか。私こそごめんなさい」
「何が?杏は何もしてねぇよ」
「ふふふ。じゃあ二人ともがなにもしてないってことで。ねっ、お昼にしましょ?映画、始まっちゃう」