俺様御曹司による地味子の正しい口説き方 ※SS集
「お願いだから、犯罪には手を染めないでね」
呆れたように、でもそこそこ真剣に、杏の親友である華さんは冗談ともとれない台詞を口にする。
「しねーよっ、」
社内で打ち合わせがあって、運よく午前中で終わったため、昼休憩を杏と久しぶりにとれた。
二人だと思ったのに。
お弁当持ちの杏と共に訪れた社食には、すでに華さんが居て「俺もいれてー」なんて甘えた声で加藤までやって来る始末。
「皆で食べるなんて久しぶりですね」
俺は杏と二人が良かったけどな。
そう思うも杏の嬉しそうな台詞に頷くしかなくて、華さんと加藤のにやつく視線に気づかないふりをした。
今日はまだ、週半ばでしかない水曜日。
早く金曜日になって思う存分杏を堪能したい。
「あ。私、今日プリン買ってきたんでした。朝から無性にプリンが食べたくなっちゃって、買ってきたんです。給湯室の冷蔵庫に入れっぱなしにしてました。皆さんまだ食べてますよね?取って来ていいですか?」
突然杏が立ち上がり、行ってきます!と席を立つ。
ちょっと待てよ、俺も行く。
そう口に出して引き留めたくても、タイミング悪く口にご飯を入れた瞬間にそんな事を言うもんだから声が出せない。
急いで咀嚼して飲み込むも、杏の姿はもう食堂から出ていった後で。
後数口だった食事をかっ込んで、杏の後を追うために俺も席を立った。
「ごちそうさん。俺も行ってくるから」
「はいはい。行ってらっしゃい」
「んぐ?小早川、お前は何処行くの?」